【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、1920年代後半~1940年代頃までに制作されたと思われる作品で、おそらくインゴットシルバーから成形され、シンプルでプリミティブな構成ながら強さがあり、とても洗練された印象も持つアンティーク/ビンテージバングルです。
武骨で素朴なデザインながら手の込んだディテールや使用されているスタンプ(鏨)のデザインやクオリティーからは、ナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】 フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)や【Austin Wilson】 オースティン・ウィルソン と 【Ike Wilson】 アイク・ウィルソンの兄弟を想起させます。ホールマーク等が見られず、作者を特定することはできませんが、手の良い職人による作品であり、著名な作家によるピースである可能性も高いと思われます。
インゴットシルバー(銀塊)から成形されたと思われるバンド/地金はしっかりとした厚みを持ち、硬くなめらかな質感に仕上げられています。また、上下のエッジは『スキャロップドエッジ』(ホタテ貝)とも呼ばれるラウンドシェイプのカッティングワークが施されており、それらは目立たないディテールですが、特筆すべきポイントとなっています。カットにより曲線を描くエッジは効果的に作品に奥行きを与え、動きのある造形を作りますが、非常に手間がかかるためハンドメイド作品ではそれほど多くみられる造形ではありません。
さらに、とても程よいボリューム感に仕上げられており、全体に力強く深いスタンプワークが施されています。またそれは、アンティーク作品独特の素晴らしいクオリティーを持つスタンプ(鏨)によって構成され、ベイナースタンプ等トラディッショナルなデザインを使いながらとてもクリエイティブな紋様を作り上げています。
また、インゴット(銀塊)から成形された地金は、センターに向かって幅が少し広くなったシェイプで、ハンマーで叩きのばすことで成形されており、アンティーク作品の特徴的な印象を生んでいます。 このようなハンマーワークによる造形は高い技術を必要とし、現在では限られた作家の作品でしか見られないディテールとなっています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
こちらの作品も同様の製法で成形されていることによって、シルバーのなめらかな肌による素晴らしい装着感も堪能できるピースとなっています。さらに、武骨ながらミニマムな印象は、非常に汎用性も高く多くスタイルによく馴染みますし、ビンテージインディアジュエリー独特の造形美は普遍的で、長くご愛用いただける印象を持っています。
また、古典的な技術によって構成された作品ですが、現代においてもデザインの独創性や新鮮な印象を失っておらず、とても重厚で武骨ながら洗練された完成度を持つバングル。アートピースの様な佇まいさえ感じさせ、こちらのような年代に制作されたジュエリーは現存数が少ないため、現在では大変貴重な作品の一つとなっています。
着用画像はこちら↓
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コンディションも良好です。アンティーク作品ながら使用感少なくキズが見られ、シルバーは黒くなっていますが、摩耗はほとんど見られず良い状態を保っています。