【Cochiti】コチティ族の大巨匠【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)の作品で、オーバーレイ技法で作られたシンプルで小さいビンテージピンブローチです。
ピンブローチのニードルパーツと共にフックタイプのバチカンが付き、ネックレスとしても2WAYで使うことのできる作品です。
こちらの作品は『JHQ』ホールマーク(作者のサイン)が刻印されており、不確かな情報ですが【H】の細い字体は1950年代~1960年代に作られた作品と言われています。
現在ではホピの伝統的な技術として認知されているオーバーレイによって構成されたピンブローチで、こちらが制作された当時はホピの作家によってその技術が高められていましたが、ナバホやホピ以外のプエブロのシルバースミスにも新しい表現方法として人気がありました。こちらの作者であるジョー・キンタナの作品にもオーバーレイのディテールが散見されます。
こちらに描かれた幾何学模様は、雲や雨を表しているか鳥をモチーフにしたものと思われますが、断定することが出来ません。また、ハンマーワークによって極僅かに中央が膨らむ立体的で美しいアール/曲面が与えられています。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。スタンプワークやカッティングと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの作家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術で、40年代~50年代Harry Sakyesvaや同い年の作家【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
【Joe H. Quintana】(Jose Higineo Quintana)の功績はこちらで語りつくせるものではありませんが、多くの賞を獲得しただけでなく、革新的な造形を生み出し、技術的にも頂点に達したインディアンジュエリーにおける最高のシルバー・スミスの一人です。 現在、トップアーティストとして活躍する作家【Cippy CrazyHorse】シピー・クレイジーホースの師であり、父親としても有名です。
1915年、Cochiti Puebloに生まれ、1932年頃からシルバースミスのキャリアをスタートさせたようです。1930年代後半頃には、【Julius Gan's Southwestern Arts and Crafts】(ユリウス・ガンズ サウスウエスト アーツアンドクラフト)に所属し、シルバースミスの一人としてジュエリーの制作に従事しました。Southwestern Arts and Craftsには、【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース、【David Taliman】デビッド・タリマン、【Mark Chee】マーク・チーも在籍していた記録が残っており、優秀でクリエイティブな作家を生み育てるバックアップや技術の継承があったと推測されます。
第二次世界大戦中は造船の仕事に従事し、ブラック・スミス(金属(鉄)鍛冶)の技術を身に付け、戦後の1950年代頭頃にニューメキシコに戻り、ロスアラモスの【Turquoise Post】やアルバカーキに在った【Seligman's】、その他にもFrank Pataniaの経営する【Thunderbird Shop】やManny Goodmanの【Covered Wagon】等、多くのインディアンクラフトショップに所属していたと言われています。 その間、1960年代中頃までになんと22本ものアートショーにおけるアワード受賞リボンを獲得しました。
1960年代後半には、【Irma Bailey】の経営する【Irma's Indian Arts & Pawn】等のために作品を制作、70年代にIrma's Indian Arts & Pawnが閉店するとコチティ族の家に戻ってシルバースミスとして活動を継続しました。
長いキャリアの中で、特に影響を感じさせるのが【Frank Patania Sr】フランク・パタニアです。1927年にサンタフェに【Thunderbird Shop】をオープンし、自身もアーティストとして評価の高いイタリア人作家のFrank Patania Srは【Joe H. Quintana】だけでなく、【Julian Lovato】ジュリアン・ロバト(1925-)や、【Louis Lomay】ルイス・ロメイ(1914-1996)にも技術やその美意識を教授した人物として知られています。
彼らは共通して高い独自性とインディアンジュエリーの伝統的で素朴な強さを持ちながら、新しい価値観や実験的な造形を生み出し、品位を感じさせる作品を多く残しました。 それぞれに強い個性を持っていますが、どこか共通する美意識を感じるのも特徴です。
ジョー・キンタナ氏の作品はシンプルで洗練されたクリーンなデザインが特徴で、唯一無二のクオリティーを誇るシルバービーズや伝統的なスタンプワークを駆使し、非常にエレガントな作品を生み出すことを得意としています。
石の選別も素晴らしい物があります。 またそのシルバーワークは多岐にわたり、銀食器や花器など様々な作品を残していますが、やはりジュエリーのクオリティーや美しさは特別なものです。70年代頭に制作したコンチョベルトはDOORSの【Jim Morrison】が愛用したことでも有名になりました。
こちらの作品はインディアンジュエリーにおけるオーバーレイ技法の黎明期に制作されたピースと思われ、シンプルでクリーンなイメージは同作者らしさを感じさせます。
シンプルなピンブローチとしてもラペルやハット・キャップのワンポイントなどに効果的なアクセントとしてお使いいただける作品であり、ネックレスとしても控えめなサイズながら、程よい存在感と奥行きを見せています。クリーンでシンプルな造形ながら、独特の抽象化された紋様など、ビンテージインディアンジュエリーのナチュラルで素朴な質感もあり、多くのスタイルによく馴染むと思われます。
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コンディションは多少のクスミや僅かなキズは見られますが、使用感なくとても良好な状態を保っています。