【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロのビンテージジュエリー、当時の価値観を反映した有機的で抽象性の高いシルバーワークをベースとして、ワイルドでアーシーなターコイズがセットされたアンティーク/ビンテージリングです。
また本作には、ホールマーク(作者や工房のサイン)が刻印されておらず、正確に作者や背景を特定することの不可能な作品ですが、過去に発見されている類似作品やデザインディテールからは【Kewa】キワ/【Santo Domingo】サントドミンゴの作家でありデザイナーとされる【Carl & Max Luthey】カール・ルーシーとマックス・ルーシー兄弟が経営した【Carl Luthey Shop】カール・ルーシーショップで制作された作品が想起されます。
1960年代中頃~1980年代初頭頃に作られた作品と思われ、比較的現存数の少ないメンズ向けのサイズも特徴となるリング。重厚なシルバーワークによる完成度も素晴らしいピースとなっています。
シャンク部分は、厚いワイヤーを伝統的な造形であるスプリットした造形で、フェイスのサイドとなるスプリット部分の上から、シャンクと完全に一体化したアップリケが施されています。
こちらのような造形は、W.Ben Huntの著書『INDIAN SILVER SMITHING』 (1959年出版)にも紹介されており、1950年代~1970年代前半頃までに作られた作品において多く見つかるディテールとなっています。
さらに、そのサイドのアップリケ部分には2本のライン模様が刻み込まれ、偶発的に生み出されたシルバーボールやドロップ等、意図的に人工的な意匠を感じさせない造形がはされています。それによりターコイズと同様に自然の一部をそのまま取り入れた様な有機的な表情を作り上げています。
またこのようなディテールは、上記の【Carl Luthey Shop】カール・ルーシーショップやターコイズビジネスにおいて有力であった【Zachary Family】ザッカリーファミリーにおいて制作された作品に見られる特徴であり、社会背景や作者の価値観が反映された造形スタイルとなっています。
フェイスは、ワイルドなラフカットながら美しい煌めきを持ったターコイズをメインに構成されています。
シールドの様なシェイプとなっていますが、原石の形状を活かしたであろうカットとなっており、凹凸のあるフォルムによってみる角度によってその表情を変化させる大変魅力的なターコイズです。
さらに、その石を留めるベゼル(覆輪)の外側には、2本のワイヤーが撚り合わされたツイステッドワイヤーが施されることでインディアンジュエリーらしい雰囲気が付加されています。
マウントされたターコイズは、前述の通りラフカットながら上質感を有するターコイズです。
【Persian Turquoise】パージャンターコイズ/ペルシャンターコイズや【Godber/Burnham Turquoise】カドバー/バーナムターコイズ、【Kingman Turquoise】キングマンターコイズ等が想起される色相やマトリックスの特徴を持っていますが、明確に特定することが出来ません。
最大の特徴は、原石のシェイプを活かしたカットと、それを可能にする厚みのあるナゲット(塊状)で産出されたターコイズであることです。
数あるターコイズの鉱山の中でも塊状で産出するターコイズは限られており、多くの鉱山において脈状(薄い層の様な状態)で発見・採掘されます。
さらにこちらは、その塊の厚みを残した贅沢なカットとなっています。
この様な質の高いターコイズではほとんどの場合、薄くカットして裏に『バッキング』と呼ばれる樹脂による補強施し、出来るだけ多くのルースに分割します。
本作では、天然石の持つ凹凸を残した厚みのある形状によって、ナチュラルでアーシーな印象が与えられています。
またそのワイルドなカット、大地や空という大自然をダイレクトに感じさせる表情と共に美しい透明感や艶を持つジェムクオリティのターコイズとなっています。
また、本作の様な原石の持ち味を生かしたナチュラルな表情のターコイズやコーラル(珊瑚)をマウントする造形スタイルは、ズニ・ナバホジュエリー双方でとても多く作られオーセンティックな造形スタイルの一つとなっています。
それらのデザインソースであり、源流を生み出したのが、【Dan Simplicio】ダン・シンプリシオ(1917-1969)や【Horace Iule (Aiuli)】ホレス・イウレ(1899~1901?-1978)というズニの巨匠達です。
【Carl Luthey Shop】カール・ルーシーショップは、上記の通りカール・ルーシーとマックス・ルーシー兄弟がニューメキシコ州アルバカーキで運営していたインディアンジュエリーショップです。1960年代に創業し、1980年代にはなくなってしまったようです。
オーナーであるルーシー兄弟はキワ/サントドミンゴプエブロの出身ですがナバホの職人を多く所属させ、兄弟がツールや材料にターコイズ、さらにはデザインも提供することで、多くのシルバースミスを育てたようです。
特別な質を持ったターコイズを用いた作品や、非常に豪奢な造形の作品、本作の様に自然をそのままシルバーワークに写し取ったようなディテール、そしてフラワーモチーフやリーフ(タバコの葉)をモチーフにした細かなシルバーワークを得意とした工房であり、ホピのデザインワークにも通じるオーバーレイによる作品も多く見られるのが特徴となっています。
本作もワイルドでアーシーなターコイズとその石のナチュラルな表情を最大限に活かした造形が魅力的な作品であり、ビンテージインディアンジュエリーらしい武骨な表情と上質な印象を兼ね備えた作品となっています。
マトリックス(不純物)が多く含まれることで評価が上がる、他の宝石とは全く逆の価値基準により、本作の様な石は非常に高くグレーディングされます。
またそれは、着用者に自然や大地を身に着けるような不思議な感覚をもたらします。
ボリューム感のあるターコイズにより、男性の手にも映える存在感とシールドシェイプによる少しクラシックな印象を持ち、ビンテージスタイルとの相性はもちろん素晴らしいリングですが、ドレスを含め色々なコーディネイトに合わせやすい汎用性も備えたリングです。
伝統的な技術を応用して作り上げられた作品ですが、強い独自性と突出した造形センスを感じさせるデザイン/造形が魅力となっている作品。その希少性と共に資料価値も高く、素朴ながらタフでワイルドな力強さが宿る大変コレクタブルなリングとなっています。
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コンディションも大変良好です。
シルバーのクスミやワイズかなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラがみられますが、使用感は少なくとても良好な状態となっています。
また、シャンクのバックサイドには古いサイズ直しの形跡も見られますがこれもしっかりとした仕上げとなっています。
ターコイズは、ラフカットで仕上げられている為、カットの研磨跡や母岩やマトリックス部分に凹凸等が見られますが、それらは天然石に由来する特徴でありダメージではありません。