南米コロンビア出身で、1950年代前半には【Frank Patania Sr.】フランク・パタニア(1899-1964)の経営するサウスウエスタンジュエリーショップ【Thunderbird Shop】サンダーバードショップで働いた作家【Carlos Diaz】カルロス・ディアズのショップで作られた作品。【Hollow Style】ホロウスタイルと呼ばれる中空構造によって柔らかな曲面を作り出し、ぽってりとしたボリューム感のあるワイドバングルです。

1958年に開業したCarlos Diazのショップは、現在でもアリゾナ州ツーソンでファミリービジネスとして営まれており、こちらの作品も同店で制作されたピースです。類似した作品は1960年代以前から制作されていいますが、現在と同じホールマーク(作者のサイン)が刻印されており、近年に作られた個体と推測されます。また、『BY CARLOS DIAZ』のホールマークが刻まれていますが、同作者本人の作品ではなく、ご子息や工房で雇い入れているシルバースミスによって作られた作品の可能性もあります。

柔らかな曲面でボリューム感のあるシェイプが中空構造によって造形されています。中空となっていますが、分厚いシルバーシートを使用することで大変重量感があり、上質感を与えているようです。このような造形は、2本のバンド/地金を用意して表になる方をハンマーワークによってドーム型に成形し、それら2本をバングルの形状にしてからロウ付けしています。柔らかいドーム型の曲面がつけられたそのフォルムはとても美しいボリューム感を持ち、手首に対するフィット感も素晴らしいバングルです。

イタリア系の作家である【Frank Patania Sr.】フランク・パタニアは、インディアンジュエリーの歴史に大きな影響を与え、非常に優秀なシルバースミスを多く育てた人物です。こちらの作者のようにインディアンシルバースミスにこだわらず、メキシカンである【Alberto Contreras】アルベルト・コントレーラス等も雇い入れていました。こちらの作品もナバホジュエリーやサウスウエスタンジュエリーをベースにしながらも独自性を打ち出したFrank Pataniaの影響を感じさせます。
ホロウスタイル自体はFrank Pataniaが活躍する前からナバホジュエリーにおいて確立されていいたようですが、こちらのようにプレーンなシルバーによって生み出されるクリーンでエレガントな表情は、Frank Pataniaの好んだ美意識であり、類似した作品はThunderbird Shopでも作られていました。


【Hollow Style】中空構造/ホロウスタイルは、1940年代後半頃からみられる技法の一つ。美しく造形するには高い技術を必要とし、こちらの様に立体的で綺麗なフォルムを作り上げるのは容易ではありません。ボリューム感のある造形を過剰な重量にすることなく形作ることが出来る技術であり、インディアンジュエリー以外でも古くから見られる技法です。


【Carlos Diaz】カルロス・ディアズは、コロンビア出身で14歳というとても若い時期からシルバースミスとしてのキャリアをスタートしています。はじめは叔父のアシスタントとして修業し技術を習得した後は、カトリック教会の為に聖杯等を作っていたようです。その後、1953年には渡米しThunderbird Shopで働き、1958年には自信のビジネスをスタートさせています。
インディアンジュエリーの技術を踏襲しながら、Frank Pataniaの影響を感じさせるデザインの作品を多く制作しました。さらに、長いキャリアに裏打ちされた独自性のある作品も生み出しています。


非常にシンプルなピースですが、独特なボリューム感によって高い完成度を感じさせます。サイズは女性に向いた小さ目となっており、無駄のない造形はとても多くのスタイルに馴染みやすい為、スタイリングしやすいバングルです。また、あらゆるジュエリーとの相性も良く、普遍的な造形は長くご愛用いただける作品です。

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コンディションも大変良好です。多少のシルバーのクスミや細かなキズや擦れは見られますが、ダメージや修理跡などはありません。