【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーや【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれる、20世紀前半のサウスウエスト観光産業の隆盛に合わせて作られた作品の一つで、アローと【逆卍】Whirling Logのシェイプにターコイズがセットされたとても小さなアンティーク/ビンテージピンブローチです。
観光客向けのスーベニアアイテムとして生まれた作品ですが、それらの中でも初期のピースと思われ、全工程を一人の職人が担当し、全てハンドメイドで仕上げられています。その為、生産に機械化や分業化が導入されたスーベニアジュエリーとは一線を画し、量産化を進めたメーカー/マニュファクチャーがデザインソースとした『オリジナル』作品の一つです。
1920年代~1930年代頃に作られた作品で、ハンドカッティングで切り出されたアローシェイプをベースに卍がアップリケ/パッチワークされており、細部はスタンプワークによって表現されています。さらに、センターにはターコイズがセットされ、スタンプワークと共に作品に奥行きを与えているようです。またそのターコイズのベゼル/覆輪も量産化された作品で多く見られる『ベゼルカップ』と呼ばれる、量産型のマシンメイドパーツではなくハンマーメイドされたベゼルが用いられています。
セットされた石はツーリストジュエリーらしい渋いグリーンターコイズで、ローングリーンに少しのマトリックスが入るナチュラルな雰囲気を醸すターコイズです。古い作品のため鉱山を特定することは出来ませんが、ビンテージ作品にとても良く馴染んだ石となっています。
またこちらのようなアイテムは、ニューメキシコ州アルバカーキの工房【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストやコロラド州デンバーでツーリスト向けのジュエリーを最も古くから製造していたことで知られる【Harry Heye Tammen】H.H.タンメン社等で作られていましたが、こちらにはショップマークやホールマークは入らず詳細は不明となっています。
卍 【Whirling Log】ワーリングログ(Swastika/スワスティカ)について・・・
4つの【L】 『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』 からなる幸福のシンボル『卍』は、ラッキーシンボルとして当時よく使われていたモチーフです。
しかしながら、1933年のナチスドイツ出現、1939年にWW2開戦によりアメリカにおいては敵国ドイツのハーケンクロイツと同一記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。 当時の新聞記事にも残っていますが、インディアンたちにも卍が入った作品の廃棄が求められ、政府機関によって回収されたりしたようです。 その後、大戦中にも多くが廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。 こちらはそのような受難を乗り越えて現存しているものです。
【Arrow】アローは、インディアンジュエリーにおける最古のモチーフの一つで、『お守り』の意味合いを持っています。
こちらの小さなサイズ感やビンテージアイテムと大変相性の良いアローと卍のシェイプは、多くのスタイルにフィットさせることが出来る汎用性を持っており、アウターのアクセントととして、ラペルや襟等にもフィットしますし、ハット等のワンポイントにも良いアクセントになってくれると思います。
ツーリストジュエリーらしいモチーフの構成ながら、コインシルバー900と思われる渋いシルバーの質感やアンティーク作品特有の素朴な味わいが印象的な作品です。
◆着用サンプル画像(4枚)はこちら◆
コンディションは、全体にシルバーのクスミや摩耗等が見られますが、目立ったダメージやリペア跡などはありません。