【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロの職人による【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれる1910年代~1950年代当時に観光客向けに生産されたスーベニアアイテムの一つで、プリミティブな技術で構成された魅力的なシルバーワークにとても珍しい石がセットされたアンティーク/ビンテージリングです。
独特のカラーとワイルドでありながら神秘的な印象をもった【Thunderegg】サンダーエッグと思われる石がセットされています。サンダーエッグはニューメキシコ州やオレゴン州で産出され、【Agate】アゲート(瑪瑙)や【Jasper】ジャスパー(碧玉)、【Opal】オパール(蛋白石)、水晶などで満たされたノジュール(団塊)のため、多くは鉱物標本として流通しており、ルースとしてカットされることは珍しく、ルースになるとアゲートやジャスパーとして流通しています。【Petrified Wood】ペトリファイドウッド(珪化木)である可能性もあり、正確に分類するのは困難ですが、いくつかの特徴を持ち合わせており、サンダーエッグがルースとしてカットされたものと推測されます。
リングとしては、1930年代末~1940年代頃のピースと思われ、ツーリストジュエリーやフレッド・ハービースタイルと呼ばれるスーベニアアイテムの作品ながら、全てハンドメイドで仕上げられています。マシン工程が併用された同スタイルのピースと比べ、シルバーの質やスタンプなどのディテール、デザインセンスなどあらゆる部分で一線を画す素晴らしい完成度と味わいを持った作品です。
おそらくインゴットシルバー(銀塊)からハンマーワークと細かなハンドカッティングにより、シャンクとフェイスパーツの双方が作られています。シャンクはフロントが割り開かれた『スプリットシャンク』と呼ばれる伝統的な造形で3本に割り開かれており、フェイスに向かって幅とボリューム感を持たせ、フェイスとの自然なつながりを作っています。
石もこのような年代の作品ではとても珍しい石がセットされていますが、後から交換されたものではなく、当時セットされたオリジナルの状態だと思われます。ベゼルにはツイステッドワイヤーが施されており、フェイスのエッジは小さなシルバードロップが放射状に羅列されることで、リングとしての存在感と石の表情を強調する演出効果が生み出されているようです。また、シャンクにもさりげなくスタンプワークが施され、スネーク/ガラガラ蛇などのキャッチーなモチーフも刻まれています。これらの構成やデザインは、マシン工程を含む量産化ピースにおいて模倣されており、それらのデザインソースとなった作品の一つと考えられます。
またこちらのようなアイテムは、1920年にコロラド州ガーデンオブザゴッズで始めた観光客向けのインディアンアートショップ【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストや、1915年に、もとは法律家だった【Julius Gans】ユリウス・ガンズによってニューメキシコ州サンタフェで創業し、その後当地でも最大級の店に成長した【Ganscraft】=【Julius Gans Southwestern Arts and Crafts】ガンズクラフト社、その他の古くからの伝統を重視する各地のトレーディングポスト等で制作されていましたが、こちらにはショップマークやホールマークは入らず詳細は不明となっています。
【Rattlesnake】ガラガラヘビ/スネークは、インディアンにとって神聖な存在として、特にプエブロインディアンの間で古くからジュエリーやポッテリー等、色々な作品に用いられました。当店のロゴにも登場するモチーフであり、脱皮して成長していく姿から、<挑戦><革命><知恵> 等を象徴するシンボルとされています。
【Thunderegg】サンダーエッグは、前述のようにアゲートやジャスパー、オパール、水晶などで満たされたノジュール(団塊)であり、様々な大きさの卵状で発見される鉱物です。また、インディアンの伝承では山の精霊達が喧嘩をした時に雷と共に投げ合ったとされています。
多くの鉱物を同時に含んでいるため、その色や表情は非常に多彩であり、大きさにも幅があります。こちらはハイドームにカボションカットされており、柔らかなクリーム色にグリーンやピンク、アンバーカラーの入る石となっています。
また、その表情が景色を映したように見える個体が多いために、【Agate】アゲートや【Petrified Wood】ペトリファイドウッド(珪化木)等と共に、総称として『ピクチャーストーン』『シニックストーン』と呼ばれることもあります。インディアンジュエリーの歴史においても古くから認知されていたと思われますが、やはりアゲートやジャスパーと明確には区別されていなかったと思われます。やはり、第二次世界大戦中にはターコイズを採掘する鉱夫の人出が不足したため、ターコイズに代わる代替え品として用いられたと推測されます。
ターコイズとは違った独特な存在感と他に類を見ない新鮮な印象を生み出し、古くから使われる素材でありながらビンテージインディアンジュエリーの新しい側面とも感じられ、ペトリファイドウッドやアゲートと共に当店では注力してご紹介しています。
ハンドメイドによる味わい深いシルバーワークは、アンティークらしい表情と少しポップでエッジーな質感を感じされるリングです。また、同時に独特の重厚な雰囲気も持ち、その長い年月を経た質感によって大人向けのアイテムに昇華されていると思います。
石とシルバーの質感が作り出すアーシーでナチュラルな印象は指馴染みが良く、女性に向いたサイズですがよいボリューム感があり、男性のピンキーリングとしてもお使いいただけるサイズ(14.5号程度)の作品です。
伝統的で原始的なシルバーワークは、ワイルドで武骨な完成度をもたらし、長くご愛用いただけるクオリティーの作品。さらに、とても珍しい神秘的なサンダーエッグの醸し出す不思議な質感は他に類を見ない特徴であり、高い希少性も有するリングとなっています。
◆着用サンプル画像(6枚)はこちら◆
コンディションはシルバーにはクスミが見られ、多少の摩耗も確認できますが、石を含め目立ったダメージはなく良好な状態です。