【NAVAJO】ナバホの巨匠【Thomas Curtis Sr.】トーマス・カーティス(1945-2013)の作品で、エッジをジグザグにカットし、そのシェイプに合わせたスタンプワークとセンターにはダイヤモンド型のリポウズが施された作品。巧みなシルバーワークで造り上げられ、グラフィカルで現代的な印象を持ったワイドバングルです。
12ゲージ(2.03㎜)の厚いシルバーをベースにした重量86gの重厚な作品。こちらの様なヘビーゲージ/ヘビーワイヤーと呼ばれる厚いシルバープレートを用いた美しい作品群は、トーマス・カーティスの得意とするスタイルであり、最も高い評価を得ているスタイルです。
フロンド部分の上下エッジは対称にジグザグのカッティングとなっており、サイドからターミナルにかけては後ろに向かって広くなる独特のシェイプに形作られています。エッジのジグザグに合わせて精密なスタンプワークが刻まれ、センターには『リポウズ/バンプアウト』と呼ばれるタガネ/鏨(鉄製の金型ツール)の凸と凹を用いてシルバーを叩きだすことで立体的なダイヤモンド(菱形)の凹凸を作っており、その細工によって奥行きが与えられ大変効果的なアクセントになっています。
さらに、ターミナルにかけては美しい放射状のスタンプが施されており、その幅に合わせてスタンプによる溝の幅までもが僅かに広くなるという他に類を見ないほど卓越したラインが刻まれています。そして、ターミナルに達したラインは、『スキャロップドエッジ』(ホタテ貝)とも呼ばれる細かな動きのあるカットに併せ細かくカッティングまで施されており、トーマス・カーティスの細部に至るこだわりを感じさせるディテールとなっています。
内側には、作者のホールマーク『T.Curtis』が刻まれていますが、素材を表す『STERLING』等の文字は見られません。ただし、こちらは間違いなくSterling Silver=925シルバー製となります。
【Thomas Curtis Sr.】トーマス・カーティスは、1943年にアリゾナ州北東部の町キームズ・キャニオンに生まれ、父方母方の両方の祖母がシルバースミスであった影響で12歳のころにはそのキャリアをスタートさせていたようです。その後、ロデオカウボーイとしてもチャンピオンに輝き、シルバースミスとロデオカウボーイを並行してキャリアを重ねてゆき、ジュエリー作品でも1980年代の後半から2000年頃にかけて多くのアートショーにおいてアワードを受賞しています。
その作品群は、ナバホのトラディショナルなスタイルや技術を踏襲しながらも唯一無二といえる深く正確なスタンプワークや細かなファイルワークを駆使し、武骨ながら繊細で特別な完成度を持った作品を多く残しています。トーマス・カーティス作品のようなほとんどズレやムラが見つけられないスタンプワークは、氏の作品を見ていると非常に簡単に作られているように感じられますが、実際にはとてつもなく高い技術力と集中力を必要とし、ナバホのベテラン作家でも真似することのできないクオリティーを持っています。
大変残念ながら、2013年6月にお亡くなりになり、現在は娘である【Jennifer Curtis】ジェニファー・カーティスがその技術やツールを受け継ぎ、父親に負けない高い完成度を持った作品を生み出しています。
こちらの作品は、同作者のピースの中でも現代的でクリーンなデザイン/造形のバングルです。ワイドウィズでありながら手首に心地よいフィット感を持ち、非常に洗練されたシルバーワークとデザインセンスは、素晴らしい完成度とジュエリーとして普遍的な造形美を持っています。
エッジーでグラフィカルな表情はスタイルのアクセントとしてとても良い存在感があり、男性に向いたサイズのバングルです。また、シンプルでミニマムな表情は長年にわたってご愛用いただけると思います。
綿密に計算された造形は、アートピースとしても美しい佇まいを持つ、巨匠Thomas Curtisによる作品。アメリカ国内でも同作者の作品は高く評価されており、現在では出会うことが少ない貴重な作品となっています。
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コンディションは、長くコレクションとして保管された未使用の作品として入荷していますが、細かなキズや僅かな擦れなどが見られ、未使用ではないと思われます。ただし、目立ったキズやダメージ、摩耗は無くとても良い状態を保っています。